アラフォー独身だったタエコさんは今どうしてるのか
私には忘れられない女性がいる。
私が16~20歳くらいの時に見たテレビ番組に出演されていた。
今から25~30年前くらいか…。
テレビ東京で19時から放送していて、タイトルはうろ覚えだけど『どっこい東京ひとり生きてます』みたいな感じだったと思う。
40代前半で独身のタエコさんは渋谷のガード下の古びたアパートに暮らしていて、お弁当屋さんで働いていた。
若い頃は劇団に所属していたといい、その頃の写真がテレビに映し出されたけど、仲間と一緒に写っているわけでも無く、ただ一人でなんとも貧相な姿だったのが忘れられない。きっと劇団の中で浮いた存在だったんだろうなと感じた。
アパートには洗濯機が無くて、台所で手洗いしていたタエコさん。
古いアパートだけどキチンと整頓して生活されていた様子の部屋だった。
扇風機が回ってた気がする。
夜は眠れないと言うタエコさんのオカッパ頭の髪の毛はかなり薄毛になっていた。
実家に電話してお母さんに「私にはもうお母ちゃんしかいないし」と泣いてた。
私は胸が痛かった。自分の未来だと思ってたから。
しかもそれは現実となって、今の私には母しかいない。
テレビのカメラマンはどんな気持ちで撮影してたんだろうか。
撮れ高に満足してたのだろうか。
私だったら意地でも泣かないな。
素直なタエコさんが哀しかった。
私はこの番組を何故か録画してあったので、タエコさんのところだけを何回も何回も見た。ビデオテープが時代遅れの物になった時にテープは全部捨ててしまったのだけど、タエコさんの映像だけはDVDにしておけば良かったと後悔している。
ネットの時代になって、何回かタエコさんのことを検索したことがあるけど、何にも出てこない。
私の中には強い印象が残っているのに、誰の記憶にも残っていないみたい。
「(自分は)吹けば飛ぶような人間ですけど…」とタエコさんは言ってた。
あのアパートもとうに無くなっているだろうし、タエコさんはあの後どうなってしまったのかとても気になる。